第2章 神経筋障害理学療法学 06)ギラン・バレー(Guillain-Barré)症候群 ③症例問題

〈第57回 PT国試 午後6〉

次の文により6,7の問いに答えよ.28歳の男性.2週前にGuillain-Barré症候群と診断された.γグロブリン大量静注療法を実施され,症状の進行は停止した.本日実施した右上肢の運動神経伝導速度検査の結果を表に示す.最も障害されていると考えられる運動はどれか. 

1.母指対立
2.示指MP関節伸展
3.中指DIP関節伸展
4.環指PIP関節屈曲
5.小指外転

解答

1.× 母指対立は正中神経の障害で生じる.
2.× 示指MP関節伸展は橈骨神経の障害で生じる.
3.× 中指DIP関節伸展は橈骨神経の障害で生じる.
4.× 環指PIP関節屈曲は正中神経支配の浅指屈筋と尺骨神経支配の深指屈筋による運動であるため,尺骨神経支配の小指外転が最も障害されると考える.
5.○ 正しい.


〈第57回 PT国試 午後7〉

次の文により6,7の問いに答えよ.28歳の男性.2週前にGuillain-Barré症候群と診断された.γグロブリン大量静注療法を実施され,症状の進行は停止した.本日実施した右上肢の運動神経伝導速度検査の結果を表に示す.現時点で最も導入を検討すべき装具はどれか. 

1.長対立装具
2.ナックルベンダー
3.IP関節伸展補助装具
4.母指Z変形用スプリント
5.コックアップ・スプリント

解答

1.× 長対立装具は正中神経麻痺に適応となる.
2.○ 正しい.
3.× IP関節伸展補助装具は橈骨神経麻痺に適応となる.
4.× 母指Z変形用スプリントは母指Z変形に適応となる.
5.× コックアップ・スプリントは橈骨神経麻痺に適応となる.


〈第55回 PT国試 午前18〉

32歳の女性.2週間前に上気道炎を発症し,5日前から四肢末端の異常感覚を自覚した.その後,徐々に四肢の脱力を認めた.Guillain-Barré症候群と診断され,直ちにγ-グロブリン大量静注療法を開始した.入院時の四肢筋力はMMTで段階4であったが,入院2日後には顔面筋麻痺と構音・嚥下障害が出現し,翌日には痰が多く呼吸困難が出現したため,気管挿管され人工呼吸器管理となった.四肢筋力は近位筋で段階1,その他は段階2~3に低下している.現時点で優先される治療はどれか. 
1.機能的電気刺激
2.筋力増強運動
3.座位練習
4.自発呼吸練習
5.排痰練習

解答

1.× Guillain-Barré症候群に機能的電気刺激は適応とならない.
2.× 現時点での筋力増強運動は時期尚早で,回復期に行う.
3.× 現時点での座位練習は時期尚早で,急性期を脱してから行う.
4.× 現段階での自発呼吸練習は時期尚早で,急性期を脱してから行う.
5.○ 正しい.


〈第52回 PT国試 午後19〉

42歳の男性.Guillain-Barré症候群.発症後3日目.四肢体幹の重度な麻痺と呼吸筋麻痺のため人工呼吸器管理の状態である.この時期に行う理学療法で適切なのはどれか. 
1.体位排痰
2.痙性の抑制
3.体幹の漸増抵抗運動
4.上下肢の高負荷の筋力増強運動
5.上下肢の過伸張を伴うストレッチ

解答

1.○ 正しい.
2.× Guillain-Barré症候群では痙性はみられない.
3.× Guillain-Barré症候群において,体幹の漸増抵抗運動は禁忌である.
4.× Guillain-Barré症候群において,上下肢の高負荷の筋力増強運動は禁忌である.
5.× Guillain-Barré症候群は弛緩性麻痺であるため,上下肢の過伸張を伴うストレッチは禁忌である.


〈第50回 PT国試 午後8〉

25歳の男性.Guillain-Barré症候群.発症後3日で運動麻痺は進行しており,呼吸筋麻痺のため人工呼吸器管理中である.理学療法で適切でないのはどれか. 
1.体位変換
2.筋力増強運動
3.胸郭ストレッチ
4.関節可動域運動
5.30°程度のリクライニング位

解答

1.○ 正しい.
2.× Guillain-Barré症候群において,運動麻痺進行中の筋力増強運動は禁忌である.
3.○ 正しい.
4.○ 正しい.
5.○ 正しい.


〈第59回 PT国試 午後14〉

42歳の男性.2週前に感冒症状が出現.3日前から両下肢のしびれと脱力を自覚し,症状が進行したため精査入院.握力は両側5kg未満.MMTは上肢3,下肢2.四肢の深部腱反射は消失し病的反射は認めない.表在感覚は両側下腿以下で重度に低下し異常感覚を伴う.神経伝導検査で両側正中神経および両側腓骨神経の活動電位の振幅の著明な減少を認める.最も考えられるのはどれか. 
1.髄膜炎
2.多発性筋炎
3.多発性硬化症
4.筋萎縮性側索硬化症
5.Guillain-Barré症候群

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ ①2週前に感冒症状が出現,②3日前から両下肢のしびれと脱力,③深部腱反射は消失し病的反射は認めない,④神経伝導検査で活動電位減少からGuillain-Barré症候群が考えられる.


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