第2章 神経筋障害理学療法学 03)筋萎縮性側索硬化症(ALS) ②理学療法

〈第42回 PT国試 午前68〉

筋萎縮性側索硬化症への対処で誤っているのはどれか. 
1.起居動作の維持
2.呼吸能力の維持
3.自己導尿の確立
4.関節拘縮の予防
5.移動手段の確保

解答

1.○ 正しい.
2.○ 正しい.
3.× 筋萎縮性側索硬化症では排尿障害がみられないため,自己導尿の確立は必要ない.
4.○ 正しい.
5.○ 正しい.


〈第51回 PT国試 午前15〉

45歳の男性.筋萎縮性側索硬化症.発症から1年経過している.ADLは自立しているが,主に下肢の筋力低下,バランス不良および鶏歩が認められる.理学療法で適切なのはどれか. 
1.車椅子操作の練習
2.下肢の漸増抵抗運動
3.両松葉杖での歩行練習
4.感覚再教育によるバランス練習
5.プラスチックAFOを装着した歩行練習

解答

1.× 歩行可能であるため車椅子操作の練習は適切でない.
2.× 筋萎縮性側索硬化症に対し下肢の漸増抵抗運動行うと,筋の過用損傷をきたす可能性があるため禁忌である.
3.× 鶏歩に対し両松葉杖での歩行練習は適切でない.
4.× 筋萎縮性側索硬化症は感覚障害がみられないため,感覚再教育によるバランス練習は適切でない.
5.○ 鶏歩が認められるため,プラスチックAFOを装着した歩行練習が適切である.


〈第49回 PT国試 午後11〉

55歳の男性.筋萎縮性側索硬化症.1年前から通勤時に右足がつまずくようになった.最近は意識して膝を上にあげて歩行している.腰椎MRIでは病的所見はなく,針筋電図所見では両側の前脛骨筋に右側優位の神経原性変化を認めた.適切な対応はどれか. 
1.座位時は足を挙上しておく.
2.移動時に車椅子を利用する.
3.立ち上がり運動を繰り返す.
4.前脛骨筋に治療的電気刺激を行う.
5.右側プラスチック短下肢装具を装着する.

解答

1.× 座位時は足を挙上しても症状改善の効果はない.
2.× 歩行が可能であるため移動時に車椅子を利用するのは適切でない.
3.× 立ち上がり運動を繰り返すと筋の過用損傷をきたす可能性があるため禁忌である.
4.× 神経原性変化が認められるため前脛骨筋に治療的電気刺激を行うのは適切でない.
5.○ ①意識して膝を上にあげて歩行,②前脛骨筋に右側優位の神経原性変化を認めることから,鶏歩が考えられるため,右側プラスチック短下肢装具を装着するのが適切である.


〈第45回 PT国試 午前13〉

60歳の男性.50歳で筋萎縮性側索硬化症を発症し,自宅療養中である.舌を含めた全身に筋萎縮があり,上肢筋の萎縮は高度である.Danielsらの徒手筋力テストで肘・股・膝関節周囲筋3~4,他は頸部・体幹を含め2.起き上がり動作と歩行とに介助を必要としている.自宅内での適切な移動方法はどれか. 
1.四つ這い移動
2.標準型車椅子での移動
3.肘をついてのいざり移動
4.ピックアップ歩行器歩行
5.杖と装具とを使用した歩行

解答

1.× 上肢の筋萎縮高度,頸部・体幹筋力2であるため,四つ這い移動は困難である.
2.○ 全身の筋萎縮と筋力低下がみられることから標準型車椅子での移動が適切である.
3.× 上肢の筋萎縮高度であるため,肘をついてのいざり移動は困難である.
4.× 上肢の筋萎縮高度,頸部・体幹筋力2であるため,ピックアップ歩行器歩行は困難である.
5.× 上肢の筋萎縮高度,頸部・体幹筋力2であるため,杖と装具とを使用した歩行は困難である.


〈第59回 PT国試 午後12〉

58歳の男性.半年前から両手の筋萎縮に気付き,最近しゃべりにくさを自覚するようになった.体重は半年で70kgから60kgに減少.MMTは両上肢の近位筋が2,遠位筋が4,両下肢が4.四肢の腱反射は亢進.舌の萎縮が認められるが明らかな嚥下障害はない.肺機能検査で%肺活量は95%.動脈血ガス分析はPaO₂:90Torr,PaCO₂:40Torrであった.現時点で最も適切な対応はどれか. 
1.BFOの導入
2.胃瘻造設術の施行
3.気管切開術の施行
4.電動車椅子の導入
5.在宅酸素療法の導入

解答

1.○ 両上肢の近位筋のMMTが2なのでBFOを導入する.
2.× 嚥下障害はないので胃瘻造設術の施行は現時点でまだ必要ない.
3.× 肺機能検査と動脈血ガス分析は正常範囲なので気管切開術の施行は現時点でまだ必要ない.
4.× 両下肢のMMTが4なので電動車椅子の導入は現時点でまだ必要ない.
5.× 肺機能検査と動脈血ガス分析は正常範囲なので在宅酸素療法の導入は現時点でまだ必要ない.


〈第50回 PT国試 午前27〉

球麻痺から発症した筋萎縮性側索硬化症で歩行が可能な患者への対応で正しいのはどれか. 
1.胸郭のストレッチを指導する.
2.呼吸機能評価を1年に1回行う.
3.栄養指導は誤嚥を認めてから行う.
4.早期からプラスチック短下肢装具を導入する.
5.鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングを指導する.

解答

1.○ 球麻痺を発症していることから,呼吸機能維持目的に,胸郭のストレッチを指導する.
2.× 球麻痺から発症した筋萎縮性側索硬化症は進行が早いため,呼吸機能評価が1年に1回では少ない.
3.× 球麻痺があるため,栄養指導は誤嚥を認める前から行う.
4.× 歩行が可能であるため,早期からプラスチック短下肢装具は導入しない.
5.× 筋萎縮性側索硬化症では,鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングは過用損傷をまねく危険があるため禁忌である.


〈第46回 PT国試 午後29〉

筋萎縮性側索硬化症患者の球症状に対するプログラムとして適切でないのはどれか. 
1.呼吸訓練
2.食物形態の指導
3.舌筋の抵抗運動
4.食事姿勢の指導
5.コミュニケーション手段の獲得

解答

1.○ 正しい.
2.○ 正しい.
3.× 筋萎縮性側索硬化症患者の球症状に対する舌筋の抵抗運動は筋の過用損傷をまねく可能性があるため禁忌である.
4.○ 正しい.
5.○ 正しい.


〈第47回 PT国試 午後45〉

球麻痺を伴う筋萎縮性側索硬化症患者とその家族への在宅指導で適切でないのはどれか. 
1.自己導尿
2.摂食指導
3.吸引器の取扱い
4.電動車椅子操作
5.コミュニケーションエイドの使用法

解答

1.× 筋萎縮性側索硬化症患者では排尿障害がみられないため,自己導尿の指導は必要がない.
2.○ 正しい.
3.○ 正しい.
4.○ 正しい.
5.○ 正しい.


〈第48回 PT国試 午後47〉

筋萎縮性側索硬化症患者で安静臥位時のPaO₂が60Torrであった.呼吸理学療法で適切なのはどれか. 
1.呼吸筋増強訓練
2.舌咽呼吸の指導
3.端座位保持訓練
4.腹筋の筋力増強訓練
5.頸部筋リラクセーション

解答

1.× この時期の呼吸筋増強訓練は過負荷である.
2.× 舌咽呼吸は筋萎縮性側索硬化症には適応とならない.
3.× 安静臥位時のPaO₂が60Torrであるため,端座位保持訓練は行ってはならない.
4.× この時期の腹筋の筋力増強訓練は過負荷である.
5.○ 安静時呼吸困難に伴う過剰な呼吸努力により,呼吸補助筋の緊張が高くなっているため,頸部筋リラクセーションが必要である.


〈第47回 PT国試 午前45〉

呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者に対する呼吸理学療法で適切なのはどれか. 
1.口すぼめ呼吸の指導
2.胸郭のストレッチ
3.呼気時の胸郭圧迫
4.腹式呼吸の指導
5.有酸素運動

解答

1.× 口すぼめ呼吸の指導は閉塞性換気障害に適応となる.
2.○ 拘束性換気障害を呈するため,胸郭のストレッチが必要である.
3.× 呼気時の胸郭圧迫は閉塞性換気障害に適応となる.
4.× 呼吸機能が低下してきた時期に腹式呼吸は困難である.
5.× 呼吸機能が低下してきた時期に有酸素運動は困難である.


〈第56回 PT国試 午前44〉

筋萎縮性側索硬化症の進行により非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法を適応すべき数値はどれか. 
1.PaO₂:80mmHg
2.PaCO₂:60mmHg
3.睡眠中SpO₂:94%
4.最大吸気圧:75cmH₂O
5.%努力性肺活量(%FVC):85%

解答

1.× PaO₂はNPPV療法適応の規定がない.
2.○ PaCO₂は45mmHg以上でNPPV療法適応となる.
3.× 睡眠中SpO₂は88%以下が5分以上持続でNPPV療法適応となる.
4.× 最大吸気圧は60cmH₂O以下でNPPV療法適応となる.
5.× %努力性肺活量(%FVC)は50%以下でNPPV療法適応となる.


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