第2章 神経筋障害理学療法学 02)脊髄小脳変性症(SCD) ③理学療法

〈第42回 PT国試 午前99〉

協調性訓練に対する原則で誤っているのはどれか.2つ選べ. 
1.速い運動から遅い運動へ移行する.
2.複雑な運動から単純な運動へ移行する.
3.多方向から単一方向への運動へ移行する.
4.広い支持面から狭い支持面へ移行する.
5.小さい範囲の運動から大きい範囲の運動へ移行する.

解答

1.○ 正しい.
2.× 協調性訓練に対する原則では単純な運動から複雑な運動へ移行する.
3.× 協調性訓練に対する原則では単一方向から多方向への運動へ移行する.
4.○ 正しい.
5.○ 正しい.


〈第57回 PT国試 午後24〉

バランス練習の難度を高める方法として正しいのはどれか.2つ選べ. 
1.重心が低い姿勢で練習を行う.
2.開眼で行っていた練習を閉眼で行う.
3.支持基底面を広くして姿勢保持練習を行う.
4.立位保持練習時にボール投げの練習を行う.
5.一定の支持基底面内の重心移動を小さくする.

解答

1.× 重心が高い姿勢で練習を行う.
2.○ 正しい.
3.× 支持基底面を小さくして姿勢保持練習を行う.
4.○ 正しい.
5.× 一定の支持基底面内の重心移動を大きくする.


〈第58回 PT国試 午後44〉

脊髄小脳変性症患者の四つ這いでのバランス練習で最も難易度が高いのはどれか. 
1.一側下肢挙上
2.一側上肢挙上
3.対側上下肢挙上
4.同側上下肢挙上
5.四つ這い位保持

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.○ 同側上下肢挙上は支持基底面が狭く,同側の支持基底面内に重心を保つのは難易度が高い.
5.× 誤り.


〈第47回 PT国試 午後44〉

脊髄小脳変性症患者で,運動範囲が小さく動作が緩慢な状態に対する運動療法として適切なのはどれか. 
1.Frenkel体操
2.重錘負荷を用いたバランス練習
3.外的リズム刺激による歩行練習
4.弾性緊迫帯を装着した協調運動
5.PNFを用いた同時筋収縮の促通

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.○ 運動範囲が小さく動作が緩慢な状態に対する運動療法には外的リズム刺激による歩行練習が適切である.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第42回 PT国試 午前86〉

脊髄小脳変性症の症状と対処との組合せで誤っているのはどれか. 
1.嚥下障害 ――― とろみ調整食品
2.起立性低血圧 ――― 弾性包帯
3.脊髄後索障害 ――― 視覚代償
4.四肢失調症 ――― PNF
5.睡眠時無呼吸症候群 ――― 口すぼめ呼吸

解答

1.○ 正しい.
2.○ 正しい.
3.○ 正しい.
4.○ 正しい.
5.× 睡眠時無呼吸症候群 ――― 持続的陽圧呼吸療法(CPAP)


〈第52回 PT国試 午後12〉

58歳の男性.歩行時のふらつきを訴えて受診した.歩隔はやや広いが左右方向は安定しており,前後方向への振り子様の歩容がみられる.検査結果を表に示す.協調運動改善のための理学療法として適切なのはどれか. 

1.自転車エルゴメーターによるペダリング運動
2.rhythmic stabilization
3.下肢筋群の持続的伸張
4.Frenkel体操
5.Epley法

解答

1.× 自転車エルゴメーターによるペダリング運動は歩行時のふらつき改善には効果がない.
2.○ 正しい.
3.× 下肢筋群の持続的伸張は協調運動改善に効果がない.
4.× 感覚位置覚正常,Romberg徴候陰性であるため,Frenkel体操は適応とならない.
5.× Epley法は良性発作性頭位幻暈症に適応となる.


〈第46回 PT国試 午後13〉

46歳の男性.脊髄小脳変性症.最近,歩行が不安定となり,壁を伝うことが多くなってきた.片脚起立は困難.複視と眼振が強く,日常生活でも気分不良となる.理学療法として適切なのはどれか. 
1.継ぎ足歩行
2.Frenkel体操
3.号令を用いた歩行
4.バランスボードを用いた起立訓練
5.リズミック・スタビリゼーション

解答

1.× ①歩行が不安定,②片脚起立困難であることより,継ぎ足歩行は難易度が高い.
2.× 複視と眼振が強く視覚代償ができないためFrenkel体操は適切でない.
3.× 脊髄小脳変性症の歩行不安定に対し,号令を用いた歩行は効果がない.
4.× ①歩行が不安定,②片脚起立困難であることより,バランスボードを用いた起立訓練は難易度が高い.
5.○ ①脊髄小脳変性症,②歩行が不安定,③片脚起立困難であることより,リズミック・スタビリゼーションが適切である.


〈第49回 PT国試 午前8〉

45歳の女性.脊髄小脳変性症.ADLは自立している.歩行は可能で,会社へは電車で通勤している.最近ふらつきが多くなり,ときに転倒することがあるという.この患者に指導する内容として適切なのはどれか. 
1.背臥位でのストレッチ
2.眼球運動による前庭刺激運動
3.立位での下肢筋力増強
4.外的リズムに合わせた平地歩行
5.T字杖を使用した応用歩行

解答

1.× 背臥位でのストレッチはふらつき・転倒に効果がない.
2.× 眼球運動による前庭刺激運動は良性発作性頭位幻暈症に適応となる.
3.○ ①脊髄小脳変性症,②歩行可能,③電車で通勤,④ふらつきが多くなりときに転倒していることから,立位での下肢筋力増強が適切である.
4.× 外的リズムに合わせた平地歩行はすくみ足に適応となる.
5.× 脊髄小脳変性症にT字杖は適応とならない.


〈第47回 PT国試 午後14〉

45歳の女性.脊髄小脳変性症.ADLは自立している.独歩は可能で,会社へは電車で通勤している.最近ふらつきが多くなり,時に転倒することがあるという.この患者に指導する内容として適切なのはどれか. 
1.杖歩行
2.片脚起立訓練
3.下肢のスクワット訓練
4.職場での車椅子の使用
5.リズムに合わせた歩行訓練

解答

1.× 脊髄小脳変性症に杖歩行は適応とならない.
2.× ふらつきと転倒がみられるため,片脚起立訓練は難易度が高い.
3.○ ①脊髄小脳変性症,②独歩可能,③電車で通勤,④ふらつきが多くなり時に転倒していることから下肢のスクワット訓練が適切である.
4.× 独歩が可能であるため,車椅子は必要ない.
5.× リズムに合わせた歩行訓練はすくみ足に適応となる.


〈第55回 PT国試 午前16〉

60歳の女性.脊髄小脳変性症.四肢体幹の運動失調で座位保持が困難であったが,2週間の座位保持練習を行い,端座位は上肢で支持しなくても保持できるようになった.今後行うバランス能力改善の運動療法として最も適切なのはどれか. 

1.セラピーボール上座位で上下肢の挙上
2.端座位からの立ち上がり練習
3.端座位での重心移動練習
4.片膝立ち位での上肢挙上
5.立位で不安定板を用いた荷重練習

解答

1.× セラピーボール上座位で上下肢の挙上は難易度が高い.
2.× 端座位からの立ち上がり練習は座位バランス能力改善には適さない.
3.○ 上肢支持なしでの端座位保持が可能になったため,次は端座位での重心移動練習を行う.
4.× 片膝立ち位での上肢挙上は難易度が高い.
5.× 立位で不安定板を用いた荷重練習は難易度が高い.


〈第58回 PT国試 午後10〉

67歳の男性.両下肢に脊髄後索性運動失調がみられる.座位で図のように床に記された複数の足形に対し,目で確認しながら自身の足を移動するよう指示した.この運動はどれか. 

1.Böhler体操
2.Buerger-Allen体操
3.Frenkel体操
4.McKenzie体操
5.Williams体操

解答

1.× Böhler体操は体幹伸展運動による脊柱起立筋の強化を目的とする.
2.× Buerger-Allen体操は末梢循環改善を目的とする.
3.○ 正しい.
4.× McKenzie体操は腰痛症の脊柱伸展可動域改善を目的とした体幹伸展・屈曲運動である.
5.× Williams体操は腰痛症に対する柔軟性改善と筋力強化,持久力強化を目的とした姿勢体操である.


〈第53回 PT国試 午前41〉

脊髄小脳変性症の患者で,歩行可能であるが伝い歩きが主であり,方向転換時に不安定となってしまう場合の歩行補助具として適切なのはどれか. 
1.T字杖
2.歩行車
3.交互型歩行器
4.ウォーカーケイン
5.ロフストランド杖

解答

1.× 歩行可能であるが伝い歩きが主であり,方向転換時に不安定な脊髄小脳変性症の患者には,T字杖は不安定なため適切でない.
2.○ 正しい.
3.× 歩行可能であるが伝い歩きが主であり,方向転換時に不安定な脊髄小脳変性症の患者には,交互型歩行器は重心移動による交互操作が難しいため適切でない.
4.× 歩行可能であるが伝い歩きが主であり,方向転換時に不安定な脊髄小脳変性症の患者には,ウォーカーケインは不安定なため適切でない.
5.× 歩行可能であるが伝い歩きが主であり,方向転換時に不安定な脊髄小脳変性症の患者には,ロフストランドは不安定なため適切でない.


〈第50回 PT国試 午前8〉

62歳の男性.5年前に脊髄小脳変性症と診断され,徐々に歩行障害が進行している.体幹失調が顕著で,下肢には協調運動障害があるが筋力は保たれている.歩隔をやや広くすることで左右方向は安定しているが,前後方向への振り子様の歩容がみられる.最近になって自力歩行が困難となり,理学療法で歩行器を用いた歩行を練習している.この患者の歩行器に工夫するべき点で適切なのはどれか. 
1.サドル付型を用いる.
2.ピックアップ型を用いる.
3.歩行器は軽量のものを選ぶ.
4.上肢支持面の側方に重錘を装着する.
5.上肢支持面は前腕部で支持できる高さにする.

解答

1.× 下肢には協調運動障害があるが筋力は保たれているため,サドル付型を用いる必要はない.
2.× 前後方向への振り子様の歩容がみられるためピックアップ型は適切でない.
3.× 歩行器は重たいものの方が安定する.
4.× 上肢支持面の前方に重錘を装着する.
5.○ 正しい.


〈第44回 PT国試 午前21〉

次の文により21,22の問いに答えよ.55歳の男性.3年前からろれつが回らず歩行が不安定で介助が必要であり,起き上がるとめまいが起こる.上肢の測定障害のためADLが制限されている.頭部MRIを示す.萎縮が認められる部位はどれか.2つ選べ.

1.脳梁
2.小脳
3.後頭葉
4.帯状回
5.脳幹部

解答

1.× 誤り.
2.○ ①ろれつが回らず,②歩行が不安定で介助必要,③起き上がるとめまい,④上肢の測定障害があることから小脳萎縮が考えられる.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ ①ろれつが回らず,②歩行が不安定で介助必要,③起き上がるとめまい,④上肢の測定障害があることから脳幹部の萎縮が考えられる.


〈第44回 PT国試 午前22〉

次の文により21,22の問いに答えよ.55歳の男性.3年前からろれつが回らず歩行が不安定で介助が必要であり,起き上がるとめまいが起こる.上肢の測定障害のためADLが制限されている.頭部MRIを示す.この患者に対する適切な治療計画はどれか. 

1.四つ這い訓練
2.主動筋と拮抗筋との協調運動訓練
3.反動を利用した立ち上がり訓練
4.ロフストランド杖による歩行訓練
5.改造自動車を利用した移動の指導

解答

1.× ①起き上がるとめまい,②上肢の測定障害があるため,四つ這い訓練は適切でない.
2.○ ①歩行が不安定で介助必要,②上肢の測定障害のためADL制限があることから主動筋と拮抗筋との協調運動訓練が適切である.
3.× 歩行が不安定であることから立位バランスの低下が考えられ,反動を利用した立ち上がり訓練は危険である.
4.× 脊髄小脳変性症ではロフストランド杖による歩行訓練は行わない.
5.× 脊髄小脳変性症に対し改造自動車を利用した移動の指導は行わない.


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