第1章 脳血管障害理学療法学 07)外傷性脳損傷 ②症例問題

〈第55回 PT国試 午後20〉

75歳の男性.脳挫傷.飲酒しトイレで倒れていた.頭部CTを示す.明らかな運動麻痺はなく,反復唾液嚥下テスト〈RSST〉は5回/30秒である.改訂水飲みテスト〈MWST〉や食物テストでは嚥下後の呼吸は良好でむせもない.義歯を使用すれば咀嚼可能であるが,実際の食事場面では自分で食物を口に運ぼうとしない.この患者の摂食嚥下で障害されているのはどれか. 

1.先行期
2.準備期
3.口腔期
4.咽頭期
5.食道期

解答

1.○ 嚥下検査結果が良好であるが,食事場面では自分で食物を口に運ぼうとしないため,先行期の障害である.
2.× 咀嚼可能であるため準備期の障害はない.
3.× 明らかな運動麻痺はなく,嚥下検査結果が良好であることから,口腔期の障害はない.
4.× 嚥下検査結果が良好であることから,咽頭期の障害はない.
5.× 嚥下検査結果が良好であることから,食道期の障害はない.


〈第54回 PT国試 午前11〉

45歳の男性.会社の事務職として働いていたが,自転車運転中に自動車にはねられ,びまん性軸索損傷を受傷した.身体機能に問題がなかったため,1か月後に以前と同じ部署である庶務に復職した.仕事を依頼されたことや仕事の方法は覚えているが,何から手を付ければ良いのか優先順位が付けられず,周囲の同僚から仕事を促されてしまう状況である.考えられるのはどれか. 
1.記憶障害
2.コミュニケーション障害
3.失行
4.失認
5.遂行機能障害

解答

1.× 依頼された仕事や方法は覚えていることから記憶障害は考えられない.
2.× 仕事を依頼されたりといったやり取りができていることからコミュニケーション障害は考えられない.
3.× 依頼された仕事や方法は覚えていることから失行は考えられない.
4.× 依頼された仕事や方法は覚えていることから失認は考えられない.
5.○ 優先順位が付けられないことから遂行機能障害が考えられる.


〈第59回 PT国試 午前9〉

50歳の男性.高所から転落し脳挫傷と診断された.入院直後から他者への配慮を欠く言動が多くみられた.家族によると,受傷前は几帳面で温厚な人物であったが,受傷後は著しく自己中心的で粗暴な言動が増え,このままでは同居は難しいとの訴えがあった.この患者に用いる検査で最も優先度が高いのはどれか. 
1.ASIA
2.FAB
3.MMSE
4.Rey複雑図形検査
5.SLTA

解答

1.× ASIAは脊髄損傷神経機能評価である.
2.○ 性格変化より前頭葉障害が疑われるので前頭葉機能障害のスクリーニング検査であるFABの優先度が高い.
3.× MMSEは認知症のスクリーニング検査である.
4.× Rey複雑図形検査は視覚性記銘検査である.
5.× SLTAは標準失語症検査である.


〈第50回 PT国試 午前7〉

19歳の男性.オートバイ事故による頭部外傷で入院加療中.受傷後1か月.JCS(Japan coma scale)はⅠ‐1.右上下肢はよく動かすが,左上下肢の筋緊張は亢進し,上肢屈曲位,下肢伸展位の姿勢をとることが多い.座位保持は可能であるが,体幹の動揺がみられる.この時期の理学療法で適切なのはどれか.2つ選べ. 
1.介助なしでのT字杖を用いた歩行練習
2.臥位での左上肢のFrenkel体操
3.座位での左下肢筋の持続伸張
4.立位でのバランス練習
5.階段を降りる練習

解答

1.× この時期に歩行練習は困難である.
2.× Frenkel体操は運動失調症に適応となる.
3.○ 正しい.
4.○ 正しい.
5.× この時期に階段を降りる練習は困難である.


〈第44回 PT国試 午前23〉

19歳の男性.オートバイ事故による頭部外傷で入院加療中.受傷後1か月.JCS(Japan coma scale)は1点.右上下肢はよく動かすが,左上下肢の筋緊張は亢進し,上肢屈曲位,下肢伸展位の姿勢をとることが多い.座位保持は可能であるが,体幹の動揺がみられる.この時期の理学療法で適切なのはどれか.2つ選べ. 
1.臥位での右上下肢のリラクセーション
2.臥位での左上肢のFrenkel体操
3.座位での左下肢筋の持続伸張
4.立位でのバランス練習
5.階段を降りる練習

解答

1.× 臥位での左上下肢のリラクセーションを行う.
2.× Frenkel体操は運動失調症に適応となる.
3.○ 正しい.
4.○ 正しい.
5.× この時期に階段を降りる練習は困難である.


〈第49回 PT国試 午後10〉

25歳の男性.オートバイ運転中に乗用車と接触して頭部を強打し救急搬送され,外傷性脳損傷と診断された.理学療法が開始され2か月が経過した.FIMは92点.基本動作はすべて可能であるが,注意散漫になりやすい.Brunnstrom法ステージは上肢Ⅵ,下肢Ⅴ,modified Ashworth scale 1,歩行速度は0.9m/s,functional balance scaleは52点であった.現時点の理学療法で重点的に行う内容はどれか. 
1.痙縮の軽減
2.平地歩行練習
3.二重課題練習
4.分離運動の促通
5.立位バランス運動

解答

1.× modified Ashworth scale 1と軽度の筋緊張亢進であることから,痙縮の軽減は重点的に行う内容でない.
2.× 歩行速度は0.9m/sであることから,平地歩行練習は重点的に行う内容でない.
3.○ 運動機能の回復もよく,基本動作や歩行は可能であるが,注意散漫になりやすいため,二重課題練習を重点的に行う.
4.× Brunnstrom法ステージは上肢Ⅵ・下肢Ⅴであることから,分離運動の促通は重点的に行う内容でない.
5.× functional balance scaleは52/56点であることから,立位バランス運動は重点的に行う内容でない.


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