第7章 精神障害作業療法学 08)認知症 ⑥前頭側頭型認知症

〈第57回 OT国試 午前44〉

前頭側頭型認知症の初期症状はどれか. 
1.失禁がある.
2.着替えができない.
3.物忘れが多くなる.
4.買い物から帰れない.
5.自分本位にふるまう.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 前頭側頭型認知症の症状は,性格変化,社会性欠如(身だしなみの乱れ,無礼な行動,万引きなど),抑制障害,常同行動などがみられる.病状が進行すると意欲・活動性が低下するため,初期の行動障害は見られなくなることが多い.


〈第56回 OT国試 午後16〉

55歳の男性.営業部の部長職に就いていたが,物や人の名前や地名が出てこないことを自覚し,その後は部下を同伴して仕事を継続していた.好きな日曜大工で使用していた工具を目の前にしてもそれを呼称できなくなり妻同伴で物忘れ外来を受診した.WAIS-Ⅲでは言語性IQが79,動作性IQは131,全検査IQは103であった.その後も徐々に言いたいことが言葉にならず,仕事で著しく疲弊するようになり退職した.徐々に誰に対してもなれなれしくなり,節度を失うような人格変化も認められるようになった.この患者の受診当初のMRI画像で予想される脳の萎縮部位はどこか. 
1.側頭葉内側部
2.前頭葉眼窩面
3.頭頂連合野
4.側頭葉前部
5.後頭葉

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.○ 言語性IQの低下,人格変化から前頭側頭型認知症が考えられるので,前頭葉前部と側頭葉前部の萎縮が予想される.
5.× 誤り.


〈第53回 OT国試 午前16〉

67歳の女性.認知症.2年前ごろから身だしなみに気を遣わずに出かけるようになった.次第に同じ食事メニューを繰り返し作る,日常会話で相手の言葉をオウム返しにする,買い物をしても代金を払わず,とがめられても気にしないといったことが多くなったため,家族に付き添われて精神科を受診し入院した.作業療法が開始された.この患者にみられる特徴はどれか. 
1.転倒しやすい.
2.情動失禁がみられる.
3.手続き記憶が損なわれる.
4.時刻表的生活パターンがみられる.
5.「部屋にヘビがいる」といった言動がある.

解答

1.× 転倒しやすいのはレビー小体型認知症の特徴である.
2.× 情動失禁は脳血管性認知症の特徴である.
3.× アルツハイマー型認知症が進行すると手続き記憶も損なわれる.
4.○ 身だしなみに気を遣わず,同じ食事メニューを繰り返し作ったりオウム返ししたり,買い物をしても代金を払わないなどから前頭側頭型認知症が疑われるので,時刻表的生活パターンが考えられる.
5.× 幻視はレビー小体型認知症の特徴である.


〈第50回 OT国試 午前43〉

前頭側頭型認知症患者の作業療法でみられる特徴はどれか. 
1.同内容の言葉を繰り返す.
2.横道にそれない.
3.約束が守れる.
4.我慢が出来る.
5.品格がある.

解答

1.○ 常同行動や反復言語は前頭側頭型認知症の特徴である.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第57回 OT国試 午後46〉

前頭側頭型認知症患者への作業療法士の対応として適切なのはどれか. 
1.活動の中で複雑な判断を本人に求めるようにする.
2.口頭指示が理解できない場合は紙に書いて伝える.
3.参加の拒否に対しては活動の内容を丁寧に説明する.
4.常同行動に対しては別の行動に切り替えるように促す.
5.食べることが止められない場合は食材を見えない場所に移動させる.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 抑制障害があるため,刺激物は見えないようにする.


〈第55回 OT国試 午前19〉

66歳の女性.歌が好きでカラオケをよく楽しんでいたが,1年前から言葉数が少なくなり夫が心配して精神科を初めて受診した.MMSEは正常範囲内であった.MRIでは前頭葉優位の限局性脳萎縮があり,SPECTでは両側の前頭葉から側頭葉に血流低下が認められた.現在は定年退職した夫と2人暮らしをしており,家事は夫が行っている.デイケアに週1回通所しており,好きだった塗り絵や和紙工芸などの作業活動に参加するが,落ち着きがなく途中で立ち去ろうとする行動が頻回にみられる.作業活動の持続を促す対応として最も適切なのはどれか. 
1.注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける.
2.顔見知りのメンバーが多いフロアに移動する.
3.立ち去ってはいけないとはっきり伝える.
4.初めて体験する手工芸を取り入れる.
5.セラピストを変更する.

解答

1.○ 前頭側頭型認知症の立ち去り行動がみられるので,注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第54回 OT国試 午後20〉

61歳の男性.BMI27.5.前頭葉および側頭葉に著明な萎縮を認めて入院加療中.発語は発症前より減少しているが,エピソード記憶や手続き記憶は比較的残存している.自分の昼食を食べ終えた後も他人の食事や配膳車の残飯を勝手に取って食べる行為があり,取り戻そうとすると激しく怒り出す.午後の集団体操プログラムではすぐに立ち去ろうとする一方,カラオケには興味を示し,集中して数曲を歌う.食行動に対する作業療法士の対応で最も適切なのはどれか. 
1.減量の必要性を説明する.
2.他の患者に状況を説明し,受容的に対応してもらう.
3.毎回の昼食が終了次第,体操プログラムを導入する.
4.毎回の昼食が終了次第,カラオケのプログラムを導入する.
5.他人の食事を勝手に食べてはいけないことを言葉で簡潔に伝える.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.○ 前頭側頭型認知症の立ち去り行動がみられるので,興味のあるカラオケのプログラムを導入する.
5.× 誤り.


〈第50回 OT国試 午後18〉

82歳の女性.認知症.会社員の娘と認知症初期の夫との3人暮らしで,家族に介護されている.患者は興奮すると夫に暴言を吐き,物を投げつけ,不安が強くなると仕事中の娘に十数回電話する状況である.集団を嫌いデイサービスの利用は拒否していたため,訪問作業療法の指示が出た.まず行うべきなのはどれか. 
1.服薬指導
2.家族への助言
3.身体機能の維持
4.趣味活動の拡大
5.記憶障害の改善

解答

1.× 誤り.
2.○ 問題行動に直接対応する家族への助言が優先される.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


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