第7章 精神障害作業療法学 02)気分障害(感情障害) ②うつ病 f.症例問題

〈第58回 OT国試 午後14〉

63歳の女性.うつ病.元来,働き者で,園芸や裁縫を楽しんでいた.定年退職し,子どもの独立,親の死が続いたころから,趣味や家事をする気力がなくなり,不眠と強い倦怠感を訴え,入院した.薬物療法により症状が軽快し,1か月後には病棟内ADLはほぼ自立したため作業療法が開始された.作業療法の初期評価で最も適切なのはどれか. 
1.独力で調理ができるかどうかを評価する.
2.主観的疲労度を頻繁に聞いて確認する.
3.裁縫での作業遂行の様子を観察する.
4.集団活動での行動特性を観察する.
5.日中の過ごし方の情報を得る.

解答

1.× 初期評価のため独力で調理ができるかどうかを評価するのはまだ早い.
2.× 初期評価のため主観的疲労度を頻繁に聞いて確認するのはまだ早い.
3.× 初期評価のため裁縫での作業遂行の様子を観察するのはまだ早い.
4.× 初期評価のため裁縫での作業遂行の様子を観察するのはまだ早い.
5.○ 正しい.


〈第55回 OT国試 午後17〉

34歳の女性.掃除と整理整頓が趣味というほど几帳面な性格である.職場での昇進によって仕事量が増え,そのため夜遅くまで残り,懸命にこなすよう努力していた.しばらくして,抑うつ状態になり,早朝覚醒,体重減少などの身体症状も出現し,精神科を受診した.抑うつ気分は朝方に強く,夕方に軽くなる傾向が認められる.この患者でみられやすいのはどれか. 
1.まわりくどく説明する.
2.他人からの依頼を断れない.
3.早朝から友人に電話をかける.
4.他人からの評価を気にしない.
5.不必要なものをいろいろと買い込む.

解答

1.× まわりくどく説明するのはてんかんや認知症でみられる.
2.○ 正しい.
3.× 早朝から友人に電話をかけるのは躁病でみられる.
4.× 他人からの評価を気にする.
5.× 不必要なものをいろいろと買い込むのは躁病でみられる.


〈第56回 OT国試 午後17〉

50歳の男性.妻と二人暮らし.1年前に支店長に昇進してから仕事量が増え,持ち前の几帳面さと責任感から人一倍多くの仕事をこなしていた.半年前に本社から計画通りの業績が出ていないことを指摘され,それ以来仕事が頭から離れなくなり,休日も出勤して仕事をしていた.2か月前から気分が沈んで夜も眠れなくなり,1か月前からは仕事の能率は極端に低下し,部下たちへの指揮も滞りがちとなった.ある朝,「自分のせいで会社が潰れる,会社を辞めたい,もう死んで楽になりたい」と繰り返しつぶやいて布団にうずくまっていた.心配した妻が本人を連れて精神科病院を受診し,同日入院となった.入院後1週間が経過した時に気分を聞くと,返答までに長い時間がかかり,小さな声で「そうですねえ」と答えるのみであった.作業療法士の対応として適切なのはどれか. 
1.退職を勧める.
2.気晴らしを勧める.
3.十分な休息を勧める.
4.自信回復のために激励する.
5.集団認知行動療法を導入する.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.○ うつ病の急性期は静かな環境で十分な休息をとることが重要である.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第57回 OT国試 午後17〉

43歳の女性.うつ病.半年前に子供が1人暮らしを始めてから気分が落ち込み,布団で寝たままでいることが増えた.家事を夫が行うようになると,「夫に迷惑をかけている自分は生きている価値がない」と口にするようになり,夫に連れられ精神科クリニックを受診した.服薬治療が開始され,症状が改善してきたため外来作業療法が処方された.導入時の作業療法士の対応で最も適切なのはどれか. 
1.スケジュール表に従った参加を促す.
2.枠組みのある構成的作業を導入する.
3.患者が作製した作品について賞賛する.
4.意欲の低下が認められても作業遂行を促す.
5.体調とともに気分も改善するため心配ないと励ます.

解答

1.× 対象者のペースを尊重する.
2.○ 工程が明確に決まっている枠組みのある構成的作業を選択する.
3.× 安易な励ましや賞賛となる言動は慎む.
4.× 対象者のペースを尊重する.
5.× 安易な励ましや賞賛となる言動は慎む.


〈第52回 OT国試 午後14〉

55歳の男性.うつ病.職場で苦手なパソコン操作を行う業務を担当するようになり,不眠,意欲低下および抑うつ気分がみられるようになった.希死念慮も認められたため入院となった.入院後1か月経過し,作業療法が開始された.初回評価で優先度が高いのはどれか. 
1.体力
2.家族関係
3.思考障害
4.作業能力
5.職場環境

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.○ 初回評価では感情,意欲・行為,思考の障害および身体症状の把握が重要である.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第46回 OT国試 午前19〉

55歳の男性.うつ病.職場で苦手なパソコン操作を行う業務を担当するようになり,不眠,意欲低下および抑うつ気分がみられるようになった.希死念慮も認められたため入院となった.入院後1か月経過し,作業療法が開始された.初回評価で優先度が高いのはどれか.2つ選べ. 
1.家族関係
2.睡眠障害
3.思考障害
4.作業能力
5.職場環境

解答

1.× 誤り.
2.○ 初回評価では感情,意欲・行為,思考の障害および身体症状の把握が重要である.
3.○ 初回評価では感情,意欲・行為,思考の障害および身体症状の把握が重要である.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第55回 OT国試 午前14〉

53歳の男性.うつ病の診断で10年前に精神科通院治療を受けて寛解した.1か月前から抑うつ気分,食思不振,希死念慮があり,入院して抗うつ薬の投与を受けていた.1週前からパラレルの作業療法に参加していたが,本日から他患者に話しかける事が増え,複数の作業療法スタッフに携帯電話番号など個人情報を尋ねてまわるようになった.「食欲も出てきた」と大声を出している.この時点での作業療法士の対応として最も適切なのはどれか. 
1.食欲が戻ったので調理実習を計画する.
2.その場で作業療法室への出入りを制限する.
3.患者との関係作りのため携帯電話番号を教える.
4.担当医や病棟スタッフに状態の変化を報告する.
5.行動的となったことを本人にポジティブ・フィードバックする.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.○ 症状・行動変化がみられた場合,他部門に報告し情報を共有することが重要である.
5.× 誤り.


〈第53回 OT国試 午前17〉

28歳の女性.産後うつ病.育児休暇中である.元来,何事にも手を抜けない性格.出産から4か月経過したころから,子どもの成長が気になり始め,夫に不安をぶつけるようになった.次第に「母親失格」と言ってはふさぎ込むようになったため,夫に連れられて精神科を受診し入院となった.1か月半後,個別的作業療法が開始となったが,手芸中に「私は怠け者」とつぶやく様子がみられた.この患者に対する作業療法士の対応として適切なのはどれか. 
1.日記を取り入れる.
2.育児の振り返りを行う.
3.患者の不安な気持ちに寄り添う.
4.家族の育児への協力方法について話し合う.
5.性格による自己否定的考えについて話し合う.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.○ 導入時は受け入れてくれる安らぎの場を提供することが重要である.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第54回 OT国試 午後15〉

65歳の女性.元来,几帳面な性格だが友人も多く活動的に過ごしていた.3か月前に,自宅のリフォームを契機に,早朝覚醒,食思不振,抑うつ気分や意欲低下が生じ,友人とも会わないようになった.自宅で自殺を企図したが未遂に終わり,1か月前に家族が精神科を受診させ,即日医療保護入院となった.単独散歩はまだ許可されていないが,抑うつ薬による治療で抑うつ気分は改善傾向にあり,病棟での軽い体操プログラムへの参加を看護師から勧められて,初めて参加した.この時点での患者に対する作業療法士の関わりで適切でないのはどれか. 
1.必要に応じて不安を受け止める.
2.過刺激を避けながら短時間で行う.
3.具体的体験により現実感の回復を促す.
4.参加各回の達成目標を明確にして本人と共有する.
5.薬物療法の副作用が生じていないかアセスメントする.

解答

1.○ 正しい.
2.○ 正しい.
3.○ 正しい.
4.× 導入時に各回の達成目標を明確にすることは負担度が増大するので不適切である.
5.○ 正しい.


〈第51回 OT国試 午前18〉

35歳の女性.現在,6か月児の子育て中であるが,1か月前からテレビも新聞も見る気が起こらないほど周囲への興味と関心が低下し,児と触れ合うこともおっくうになった.物事の判断が鈍くなり,子育てに自信をなくし,自分を責め,ささいなことから不安になりやすくなったため,児を祖母に預けて精神科病院に入院した.入院翌日から不安の軽減を目的に作業療法が開始された.この患者に対する作業療法士の対応で適切なのはどれか. 
1.運動によって体力の増強を図る.
2.趣味をみつけるよう働きかける.
3.子育ての情報提供により関心を高める.
4.集団のレクリエーションで気分転換を図る.
5.ゆとりが持てるような日中の過ごし方を話し合う.

解答

1.× 導入時のため運動による体力増強を図るのはまだ早い.
2.× 導入時のため趣味をみつけるよう働きかけるのはまだ早い.
3.× 子育に関心が向かないようにする.
4.× 導入時のため集団のレクリエーションで気分転換を図るのはまだ早い.
5.○ 正しい.


〈第59回 OT国試 午前17〉

36歳の女性.5か月の乳児の子育て中.1か月前から周囲への興味と関心が低下し,育児がおろそかになってきた.物事の判断が鈍くなり,育児に自信をなくし,ささいなことで不安になった.うつ病と診断され,乳児を実母に預けて入院した.入院後早期に不安の軽減を目的に作業療法が開始された.導入時の作業療法で優先すべき対応はどれか. 
1.運動で体力の増強を図る.
2.趣味をみつけるよう働きかける.
3.子育てに関するアドバイスを行う.
4.集団レクリエーションで気分転換を図る.
5.ゆとりが持てるような日中の過ごし方を話し合う.

解答

1.× 導入時のため運動で体力の増強を図るのはまだ早い.
2.× 導入時のため趣味をみつけるよう働きかけるのはまだ早い.
3.× 子育に関心が向かないようにする.
4.× 導入時のため集団レクリエーションで気分転換を図るのはまだ早い.
5.○ 正しい.


〈第46回 OT国試 午前18〉

48歳の女性.20歳代で夫が亡くなり1人で子どもを育てた.子どもが就職し家を離れたころから意欲が低下し,気分が落ち込むようになった.精神科外来に通院していたが,今回,食欲不振が続いたため入院となった.入院後3週経過し作業療法が開始された.この患者の作業療法実施上の留意点で適切なのはどれか.2つ選べ. 
1.楽しみを見つける.
2.早期の就労を促す.
3.自殺企図に注意する.
4.身辺処理能力を高める.
5.過去の生活課題を振り返る.

解答

1.○ 正しい.
2.× 導入時のため就労支援はまだ早い.
3.○ 正しい.
4.× 導入時のため身辺処理能力を高めるのはまだ早い.
5.× 過去の生活課題を振り返るのは負担度が増大するので不適切である.


〈第50回 OT国試 午前16〉

55歳の男性.うつ病.3か月前に昇格し研修部門の責任者となった.最近になり睡眠障害と気分の落ち込みとが出現した.職場では研修予定が立てられない,報告書の提出が遅れるなど仕事がこなせなくなった.心配した上司に勧められて精神科を受診し,休職することになった.この時点の作業療法で適切なのはどれか.2つ選べ. 
1.楽しい体験を勧める.
2.休息の重要性を伝える.
3.作業活動時間は短くする.
4.生活課題への取り組みを始める.
5.能力向上のための課題を提供する.

解答

1.× 可能な限り休息を勧める.
2.○ 正しい.
3.○ 正しい.
4.× 導入時のため生活課題への取り組みを始めるのはまだ早い.
5.× 導入時のため能力向上のための課題を提供するのはまだ早い.


〈第58回 OT国試 午後17〉

55歳の男性.中学校教員.元来,几帳面で真面目な性格.半年前から経験のないバレー部の顧問を任され,心労が重なっていた.2か月前から早朝覚醒,食欲低下が出現し,抑うつ気分を自覚していた.1か月前から「どうやって授業をすればよいか分からない.死んで生徒にお詫びをしたい」などと述べるようになった.妻に付き添われて精神科を受診後,入院となり,薬物療法が開始となった.入院2週後から作業療法が開始された.作業療法開始時の対応で適切なのはどれか. 
1.気分が良いときは薬を飲まないように伝える.
2.休息の重要性について説明する.
3.集団でのスポーツ活動を優先する.
4.授業のやり方について相談に乗る.
5.早期退職を勧める.

解答

1.× 気分が良いときでも薬を服用するように伝える.
2.○ 正しい.
3.× 開始時のため集団でのスポーツ活動はまだ早い.
4.× 開始時のため授業のやり方について相談に乗るのはまだ早い.
5.× 早期退職を勧める必要はない.


〈第52回 OT国試 午前18〉

57歳の女性.夫と寝たきりの母親との3人暮らし.編み物を趣味としていた.患者は手の抜けない真面目な性格で,介護が2年続いたころから「体が動かない.死んでしまいたい」と寝込むようになった.夫に連れられ精神科病院を受診し入院.1か月後に作業療法が導入となった.しかし,作業療法士に「母のことが気になるんです.ここにいる自分が情けない」と訴えた.この患者への対応として適切なのはどれか. 
1.主治医に早期の退院を提案する.
2.他の患者をお世話する役割を提供する.
3.趣味の編み物をしてみるよう提案する.
4.休むことも大切であることを説明する.
5.他の患者との会話による気晴らしを促す.

解答

1.× 主治医に早期の退院を提案するのは不適切である.
2.× 母親の介護と同じ状況設定のため不適切である.
3.× 未経験で枠組みが明確に決まっている構成的作業を提案する.
4.○ 正しい.
5.× 可能な限り休息を勧める.


〈第56回 OT国試 午前17〉

65歳女性.約1年前から抑うつ気分,意欲低下,判断力低下,不眠,食思不振などがあり,約9か月前に精神科外来を初めて受診した.希死念慮や貧困妄想も加わり,約8か月前に医療保護入院となっている.抗うつ剤投与により不眠,食思不振はある程度改善されたが,悲観的な思考内容は遷延化した.促してかろうじて病棟外への散歩に応じるようになり,数か月が経過したところで,主治医から作業療法の依頼があった.この時点で作業療法として適切でないのはどれか. 
1.本人の自己決定を見守る.
2.個別のかかわりから開始する.
3.1回の活動時間は短く設定する.
4.長時間をかけて完成する課題を採用する.
5.なじみのある課題より初めての課題を採用する.

解答

1.○ 正しい.
2.○ 正しい.
3.○ 正しい.
4.× 工程がはっきりしていて,短期間で完成するものが好ましい.
5.○ 正しい.


Back | 【第7章 精神障害作業療法学 目次】 | Next