第7章 精神障害作業療法学 01)統合失調症 ⑤症例問題

〈第51回 OT国試 午後17〉

35歳の女性.統合失調症.デイケアの就労準備プログラムに参加している.普段は生真面目で穏やかな性格であったが,3週前から些細なことでいら立ち怒り出すようになった.悪化の原因を理解することを目的とした面接において,担当の作業療法士が優先して確認すべき項目はどれか. 
1.食欲
2.服薬状況
3.家族の問題
4.就労に向けた不安
5.デイケアの人間関係

解答

1.× 誤り.
2.○ 統合失調症の再発・悪化の原因の一つに断薬があるので,服薬状況の確認を優先する.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第54回 OT国試 午前14〉

20歳の男性.1年浪人した後に大学に入学し親元を離れた.夏休みに帰省した時に独語や空笑が目立ち始め,バイクに乗って信号無視したところを警察に捕まった.事情聴取の中で「逃げないと殺される」といった支離滅裂な言動がみられたため,連絡を受けた両親に付き添われ精神科を受診し入院となった.入院から1か月後,幻聴と妄想が減弱したところで作業療法が開始となった.この時点での作業療法の役割で正しいのはどれか. 
1.自信の回復
2.疲労度の調整
3.達成感の獲得
4.対人交流の拡大
5.身辺処理能力の回復

解答

1.× 自信の回復は回復期後期に行う.
2.○ 亜急性期なので疲労度の調整を行う.
3.× 達成感の獲得は回復期後期に行う.
4.× 対人交流の拡大は回復期後期に行う.
5.× 身辺処理能力の回復は回復期前期に行う.


〈第58回 OT国試 午前20〉

26歳の男性.統合失調症.不動産会社社員.約半年前に仕事のトラブルから次第に欠勤するようになって退職し,引きこもりの生活になった.次第に服薬が不規則になり,幻聴と妄想が出現し入院となった.入院2か月で症状は改善したが,無為の生活が続いており,作業療法が処方された.この時期に優先すべき作業療法の役割はどれか. 
1.仲間づくり
2.社会生活技能の習得
3.身辺処理能力の回復
4.対人交流技能の向上
5.基本的な生活リズムの回復

解答

1.× 仲間づくりは維持期に行う.
2.× 社会生活技能の習得は維持期に行う.
3.× 身辺処理能力の回復は回復期前期に行う.
4.× 対人交流技能の向上は回復期後期に行う.
5.○ 引きこもりの生活から服薬が不規則になり退院後無為の生活が続いているので,まずは基本的な生活リズムの回復を行う.


〈第51回 OT国試 午後18〉

16歳の女子.約6か月前から,壁に向かってぶつぶつと独りで話をしている.悪口が聞こえる,と周囲を怖がる様子がみられ,学校に行かず自宅に閉じこもることが多くなった.両親に説得されて病院を受診したが,自分は病気ではないと治療に抵抗するため,ACT〈Assertive Community Treatment〉による訪問が開始された.この患者に優先すべきなのはどれか. 
1.SSTを実施する.
2.復学に向けた検討を行う.
3.治療の必要性を納得させる.
4.集団心理教育プログラムを行う.
5.患者の興味を話題にして関係性を築く.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 治療に抵抗がみられているので,まずは患者の興味を話題にして関係性を築く.


〈第54回 OT国試 午前20〉

30歳の男性.統合失調症で5年前に幻覚妄想状態で家族に対する興奮があり,医療保護入院となった既往がある.退院後はほぼ規則的に通院し,毎食後服薬していたが,3か月前から治療を中断し,幻聴や被害関係妄想が悪化し,両親を自宅から閉め出して引きこもってしまった.注察妄想もあり本人も自宅から外出できない状況である.多職種訪問支援チームが1年前から関わっており,訪問は受け入れてもらえている.この患者への今後の介入で最も適切なのはどれか. 
1.本人の意志に関わらず,繰り返し服薬を強く促す.
2.両親を自宅に同行させ,その場で本人に両親への謝罪を促す.
3.民間救急を利用し,中断していた精神科病院の救急外来に搬送する.
4.本人の希望や生活上の困り事を根気よく引き出し,関係を深める努力をする.
5.訪問頻度を減らし,本人が助けを求めるのを待って精神科外来に結びつける.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.○ 両親を自宅から閉め出して引きこもっているが訪問は受け入れてもらえているので,まずは本人の希望や生活上の困り事を根気よく引き出し,関係を深める努力をする.
5.× 誤り.


〈第53回 OT国試 午前20〉

52歳の男性.統合失調症で精神科入院歴があるが,この9年間は治療中断しており,時々幻聴に影響された言動がみられる.医師の往診の後,何とか本人の同意を得て訪問支援開始となった.初回訪問時,居間で20分ほど落ち着いて話ができる状況である.初期の訪問において,作業療法士が最も留意すべきなのはどれか. 
1.服薬勧奨を積極的に行う.
2.1日に複数回の訪問を行う.
3.身の回りの整理整頓を促す.
4.毎回違うスタッフが訪問する.
5.本人の興味や関心事を把握する.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 何とか本人の同意を得た初回訪問なので,まずは関係性を築くために本人の興味や関心事を把握する.


〈第51回 OT国試 午前19〉

45歳の男性.統合失調症.自宅で単身生活をしている.精神症状は安定しているが,買い物に行くときを除き自宅に引きこもっている.週3回のヘルパーによる食事のサービスと惣菜による食事摂取をしている.偏食と間食が多く,身長167cm,体重92kgと肥満である.最近の血液検査の結果,脂質異常症と診断された.訪問作業療法における健康管理支援として適切なのはどれか. 
1.自炊を目指した調理訓練を提案する.
2.抗精神病薬の変更を主治医に提案する.
3.入院による生活リズムの改善を提案する.
4.買い物はスタッフが代行することを提案する.
5.散歩やストレッチなどの運動を取り入れることを提案する.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 精神症状は安定しているいるので,脂質異常症の健康管理支援として散歩やストレッチなどの運動を取り入れることを提案する.


〈第46回 OT国試 午後18〉

22歳の男性.統合失調症.作業療法の開始後,しばらくして「周りの人が自分の悪口を言っている気がする」と訴えてきた.作業療法士の対応として適切なのはどれか. 
1.訴えを助長しないよう聞き流す.
2.個室に移動させ,作業を継続させる.
3.休憩を取り入れ,周りの人たちの様子を観察させる.
4.勘違いであることを説明し,気にしないよう説得する.
5.周りの人たちに,悪口を言ったかどうかを1人ずつ確認する.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.○ 妄想は否定したり間違いであること指摘せず,本人の気分転換を図ると共に客観視する現実見当を促す.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第53回 OT国試 午前14〉

23歳の男性.高校卒業後,公務員として働いていた21歳時に統合失調症を発症したため退職し,入院した.退院後は家業を手伝っていたが,命令的内容の幻聴によって3日間放浪したため,2度目の入院となった.1か月後に退院し,実家からデイケアに通い始めた.この時点で把握すべき情報として最も重要なのはどれか. 
1.認知機能
2.対人関係
3.余暇の過ごし方
4.就労に対する希望
5.精神症状の生活への影響

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 再発後の入院でなので,まずは精神症状の生活への影響を把握する.


〈第53回 OT国試 午後20〉

30歳の男性.統合失調症.3週前に工場で働き始めた.外来作業療法ではパソコンを使用した認知リハビリテーションを継続している.ある時,同じ作業療法に参加する2人の患者から同時に用事を頼まれ,混乱した様子で相談に来た.この患者の職場における行動で最もみられる可能性があるのはどれか. 
1.挨拶ができない.
2.心気的な訴えが多い.
3.体力がなく疲れやすい.
4.すぐに仕事に飽きてしまう.
5.仕事の段取りがつけられない.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 同時に用事を頼まれ混乱した様子から,仕事の段取りがつけられない可能性がある.


〈第52回 OT国試 午後13〉

24歳の女性.統合失調症.2か月前からスーパーの惣菜コーナーで働いている.週1回,外来作業療法を利用しており,仕事や生活の様子を話題にしながら患者の体調の確認を行っている.作業療法士が気を付けるべき状態悪化時のサインとして適切でないのはどれか. 
1.不穏な状態になる.
2.睡眠時間が長くなる.
3.仕事を休みがちになる.
4.仕事仲間に疑い深くなる.
5.仕事上のミスが多くなる.

解答

1.○ 正しい.
2.× 睡眠時間の減少が状態悪化時のサインである.
3.○ 正しい.
4.○ 正しい.
5.○ 正しい.


〈第59回 OT国試 午前16〉

38歳の女性.統合失調症.長期入院後,ACTチームによる訪問支援を受けながら一人暮らしを始めた.服薬は自己管理.時折聞こえる幻聴に対処できていたが,部屋は整理整頓できていない.最近,就労希望を受けて,ACTチームの作業療法士が就労支援を担当することになった.作業療法士の対応で最も優先すべきなのはどれか. 
1.幻聴が聞こえる頻度について確認する.
2.本人が望む職種や条件について聞き取る.
3.就労継続支援B型事業所への見学を計画する.
4.部屋の清掃ができるようになってから就労を考えるように促す.
5.就職活動に向けて主治医に服薬について相談することを提案する.

解答

1.× 幻聴が聞こえる頻度について確認するのは対処できているので優先度は低い.
2.○ 正しい.
3.× 就労支援開始時なので就労継続支援B型事業所への見学を計画するのはまだ早い.
4.× 部屋の清掃ができるようになってから就労を考えるよう強要しない.
5.× 就職活動に向けて主治医に服薬について相談することを提案するのは自己管理できているので優先度は低い.


〈第58回 OT国試 午後20〉

42歳の女性.統合失調症.定期的に訪問看護を受けながら社会生活ができている.服薬が不規則になったり,強いストレス状況下で時折幻聴があるが,ある程度は対処できている.本人は,一般就労を希望しており,訪問看護と外来作業療法で支援することになった.訪問看護師からの情報では,本人の部屋には服や食器が散乱しているとのことであった.開始当初の作業療法士の対応で最も優先すべきなのはどれか. 
1.本人の部屋の整理整頓を促す.
2.本人の興味や関心事を把握する.
3.規則的な服薬の重要性について指導する.
4.幻聴があるので入院治療を受けるように促す.
5.作業療法士自身の私生活について積極的に伝える.

解答

1.× 誤り.
2.○ 本人の部屋には服や食器が散乱しているとのことから無為・自閉の状態と考えらえるので,開始当初は本人の興味や関心事を把握する.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.× 誤り.


〈第59回 OT国試 午後20〉

34歳の女性.統合失調症.大学卒業後に就職したが,すぐに退職し,精神科デイケアに通所しながら就労移行支援事業所を利用することになった.IPSによる就労移行支援を2年間利用後にケーキ屋に就職した.しかし注意・集中力の低下により,商品名を覚えるのが困難で1年で退職し,精神科デイケアの作業療法士に「一般就労をしたい」と相談した.患者への提案で最も適切なのはどれか. 
1.就労定着支援の利用を勧める.
2.休息を目的とした入院を勧める.
3.一般就労をあきらめるように伝える.
4.就労継続支援A型事業所を紹介する.
5.認知機能の改善を目指したプログラムへの参加を勧める.

解答

1.× 誤り.
2.× 誤り.
3.× 誤り.
4.× 誤り.
5.○ 注意・集中力の低下が原因で1年で退職しているので認知機能の改善を目指したプログラムへの参加を勧める.


〈第59回 OT国試 午前19〉

70歳の男性.統合失調症.数回の入院歴があるが,精神科デイケアを利用しながら独居生活を継続していた.半年前に脳梗塞を発症し,軽度の右片麻痺を呈した.最近,体力低下が原因でデイケアへの通所回数が減り,「家事ができなくなった」と訴えた.今後,独居生活が困難になることが予想された.現時点で,精神科デイケアの担当作業療法士が優先して検討すべきものはどれか. 
1.精神科病院への入院
2.介護保険サービスの利用
3.同行援護のサービス利用
4.重度認知症患者デイケアの利用
5.障害者地域生活支援センターの見学

解答

1.× 精神症状が増悪していないので精神科病院への入院の検討は必要ない.
2.○ 体力低下が原因で独居生活が困難になることが予想されるので介護保険サービスの利用を優先して検討する.
3.× 視覚障害はないので同行援護のサービス利用の検討は必要ない.
4.× 認知症症状はないので重度認知症患者デイケアの利用の検討は必要ない.
5.× 独居生活を継続しているので障害者地域生活支援センターの見学の検討は必要ない.


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