第1章 脳血管障害作業療法学 07)外傷性脳損傷 ②評価

〈第53回 OT国試 午前4〉

29歳の男性.バイク転倒事故による右前頭葉脳挫傷および外傷性くも膜下出血.事故から2週後に意識清明となり,作業療法が開始された.運動麻痺と感覚障害はない.礼節やコミュニケーション能力は保たれているが,感情表出は少なく,ぼんやりとしていることが多い.既知の物品操作方法は覚えているが,事故後の出来事に関する情報は忘れやすい.作業療法開始時間までに支度を整えることが難しく,しばしば時間に遅れる.この患者の状態を評価するために適切と考えられる評価法はどれか.2つ選べ. 
1.BADS
2.RBMT
3.SLTA
4.SPTA
5.VPTA

解答

1.○ 前頭葉症状として遂行機能障害が疑われるため,BADS(遂行機能障害症候群の行動評価法)は適切である.
2.○ 情報を忘れやすいため,RBMT(行動記憶検査)は適切である.
3.× 失語症症状がみられないため,SLTA(標準失語症検査)は適切でない.
4.× 失行症状がみられないため,SPTA(標準高次動作性検査)は適切でない.
5.× 視知覚障害や視覚失認の症状がみられないため,VPTA(標準高次視知覚検査)は適切でない.


〈第52回 OT国試 午前4〉

28歳の男性.右利き.交通事故による右前頭葉背外側部の頭部外傷のため入院した.作業療法が開始され,4か月が経過した.四肢に運動麻痺や感覚障害を認めず,歩行は自立している.日中はボーッとして過ごすことが多いが,促されると日課を行う.話しかければ日常会話は問題なく成立するが,自発話は乏しい.この患者の高次脳機能評価として最も適切なのはどれか. 
1.BADS
2.SLTA
3.SPTA
4.VPTA
5.CBS〈Catherine bergego scale〉

解答

1.○ 前頭葉症状として遂行機能障害が疑われるため,BADS(遂行機能障害症候群の行動評価法)は適切である.
2.× 失語症症状がみられないため,SLTA(標準失語症検査)は適切でない.
3.× 失行症状がみられないため,SPTA(標準高次動作性検査)は適切でない.
4.× 視知覚障害や視覚失認の症状がみられないため,VPTA(標準高次視知覚検査)は適切でない.
5.× 半側空間無視の症状がみられないため,CBS〈Catherine bergego scale〉は適切でない.


〈第51回 OT国試 午前3〉

35歳の男性.右利き.バイク事故のため救急搬送された.頭部MRIのT2強調像にて両側前頭葉の眼窩面と背外側とに高信号域が認められた.約1か月後に退院.半側空間無視,記憶障害および視知覚障害はないが,脱抑制による職場でのトラブルが続き作業療法を開始した.この患者に行う評価で正しいのはどれか. 
1.BADS
2.BIT
3.RBMT
4.SLTA
5.VPTA

解答

1.○ 前頭葉背外側の障害に,注意機能障害を含む遂行機能障害がみられるため,BADS(遂行機能障害症候群の行動評価法)は適切である.
2.× 半側空間無視がみられないため,BIT(行動性無視検査)は適切でない.
3.× 記憶障害がみられないため,RBMT(行動記憶検査)は適切でない.
4.× 失語症症状がみられないため,SLTA(標準失語症検査)は適切でない.
5.× 視知覚障害がみられないため,VPTA(標準高次視知覚検査)は適切でない.


〈第47回 OT国試 午後4〉

28歳の男性.交通事故による頭部外傷のため入院した.作業療法が開始され,4か月が経過した.四肢に運動麻痺や感覚障害を認めず,歩行は自立している.日中はボーッとして過ごすことが多いが,促されると日課を行う.今日の日付を聞くと,カレンダーを見てようやく答えることができる.病棟と作業療法室の行き来では,今いる場所や行き先が分からなくなるので見守りが必要である.現時点の頭部CTを示す.この患者の状態を評価するのに適切でないのはどれか. 

1.TMT
2.MMSE
3.WCST
4.線分抹消検査
5.線分2等分検査

解答

1.○ 正しい.
2.○ 正しい.
3.○ 正しい.
4.○ 正しい.
5.× 前頭葉に低吸収域が認められるため,頭頂葉病変で生じやすい半側空間無視の検査は適切でない.


〈第44回 OT国試 午前8〉

25歳の男性.交通事故による外傷性脳損傷.三宅式記銘力検査の結果を表に示す.解釈として正しいのはどれか. 

1.固執
2.脱抑制
3.注意障害
4.学習効果
5.言語性理解低下

解答

1.× 固執とは自分の意見などを正当な理由もなく固く主張して曲げない状態である.
2.× 脱抑制は感情の抑制などがきかなくなることである.
3.× 注意障害は集中力の持続ができない状態である.
4.○ 正しい.
5.× 言語性理解低下は文字や言葉の理解が低下している状態である.


〈第50回 OT国試 午前5〉

31歳の男性.バイク事故にて脳挫傷を受傷.受傷直後から意識障害が1週間持続した.受傷後1か月経過し高次脳機能障害の検査を行ったところ,かな拾い検査は正解数15,見落とし数27%,TMT(trail making test)はA 56秒,B 125秒であった.最も考えられる症状はどれか. 
1.モリア
2.アパシー
3.注意障害
4.類推の障害
5.抽象思考の障害

解答

1.× モリアは「ふざけ症」ともいい,道化師的な機嫌の良さとつまらない冗談が多い多弁の状態で,前頭葉症状の一つである.
2.× アパシーは行動面と認知面の減退と感情的反応面の減退を含む障害で,意欲低下や無関心といわれているものである.
3.○ 正しい.
4.× 類推障害とは与えられた材料から結果を推し量ることができない状態である.
5.× 抽象思考障害とはいくつかの物の共通な部分を取り出して考えることができない状態である.


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